むかしむかし 今から千三百年以上も前のお話です
奈良の都に **元興寺(がんごうじ)**という大きなお寺がありました
このお寺では たくさんの若いお坊さんたちが毎日お経を唱え 仏さまの教えを学んでいました
ところが ある頃から不思議なことが起こるようになりました
夜になると お寺のどこからともなく「カタッ カタッ」と足音が聞こえてきま
朝になると 一人 また一人と若いお坊さんが姿を消してしまうのです
「鬼が出るぞ」
「夜になると恐ろしい化け物がやって来る」
そんなうわさが都中に広まり お坊さんたちは日が暮れる前に戸を閉め
震えながら夜を過ごしていました
しかし その中に一人だけ 少しも怖がらない少年のお坊さんがいました
その名を **道場法師(どうじょうほうし)** といいます
道場法師は
「仏さまを信じる者が 鬼を恐れていてはなりません
今夜は私が鬼の正体を見届けましょう」
と言いました
その夜 誰もいないお堂で 道場法師は静かに座って お経を唱え続けました
夜が更けると 冷たい風が吹き込み あたりはしんと静まり返ります
その時です
暗闇の中から 赤く光る二つの目が現れました
大きな体 長い髪 鋭い爪を持つ鬼が、ゆっくりと近づいてきます
普通なら逃げ出してしまうところですが 道場法師は少しも動きません
鬼が飛びかかってきた その一瞬
「えいっ!」
道場法師は鬼の長い髪をしっかりとつかみました
鬼は驚いて暴れ回ります
お堂の柱にぶつかり 庭を走り回り 屋根へ飛び上がります
それでも道場法師は決して手を離しません
やがて鬼は大きな叫び声をあげ 夜の闇へと逃げ去っていきました
その時 鬼の髪だけが道場法師の手に残ったといわれています
それからというもの お寺には二度と鬼は現れませんでした
若いお坊さんたちは安心して修行ができるようになり
元興寺には再び静かな日々が戻ったのでした
人々は
「仏さまを信じる勇気は どんな鬼にも負けない」
と語り継ぎ 道場法師の勇敢な姿は 今でも元興寺の伝説として伝えられています
元興寺(がんこうじ)の鬼退治
伝説


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