~荒れ寺にひそむ化け物の正体~
昔々 ある旅人(または侍)が日暮れまで歩き続け ようやく一つの村へたどり着きました
「どうか一晩泊めてください」
旅人が頼むと 村人たちは顔を見合わせて言いました
「泊まるところはありますが 村はずれの古いお寺だけはやめなさい
あそこには化け物が出て 泊まった者は朝まで生きて帰れないと言われています」
しかし旅人は 少しも怖がりません
「化け物など恐れるものか」
そう言って 荒れ果てた寺で一夜を過ごすことにしました
夜が更けると 本堂の奥から
「ゴーン ゴーン……」
「ドンドコ ドンドコ……」
「カーン カーン……」
と 不気味な音が 聞こえてきます
旅人が息をひそめてのぞくと
木魚や鐘 太鼓、古い仏具までもが 命を持ったように動き出し
輪になって 踊っています
やがて化け物たちは 歌い始めました
「長いあいだ使われたものは、みんな魂を持つ
粗末にされ 捨てられた悲しみを 知っている」
旅人は刀を抜くことなく その様子を静かに見守りました
夜明けとともに 化け物たちは姿を消え
寺は元の静かな本堂へ 戻っていました
村人たちは驚きました
「化け物に襲われなかったのですか」
旅人は笑って答えました
「恐ろしい化け物ではなかった 長い年月 人に使われながら
忘れられた道具たちの悲しい心だったのだ 」
それ以来 村人たちは古い道具や仏具を 粗末に扱わなくなり
お寺も再び大切にされるように なったということです
「化け物寺」は 日本各地に伝わる昔話です
長く使った物を大切にする心 と 恐れに負けず真実を見極める勇気
を教えていることです



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