施餓鬼(せがき) 供養・・

季節の・・

むかしむかし 阿難(あなん)という 心のやさしいお坊さまがおりました
阿難は いつもお釈迦さまのそばで教えを聞き
人々の悩みを聞いては助けておりました
ある夜のこと 阿難 静まり返った森の中で座禅をしていると――
ヒュウウウ…… と冷たい風が吹き あたりの闇がゆらりと揺れました
「おや……?」
阿難が目を開けると そこには やせこけて骨ばかりの
目だけぎらぎら光る恐ろしい姿の 餓鬼が立っていたのです
餓鬼は 「ひゅう」 と息を吸い込み 低い声で言いました
「阿難よ…… 三日のうちに お前は死ぬ 
  そしてわしらと同じ 餓鬼道に落ちるのだ…… 」
阿難はびっくりして 心臓がどきんと跳ねました
しかし 恐ろしさよりも先に 餓鬼の悲しげな顔が気になりました
「どうして、そんなことに……?」
餓鬼は答えません ただ 苦しそうにうめきながら 闇の中へ消えていきました
阿難は急いでお釈迦さまのもとへ戻り すべてを話しました
するとお釈迦さまは やさしくうなずき
「阿難よ 餓鬼たちは飢えと苦しみで 救いを求めておる
  食べ物を施し 仏の教えを説き その功徳を亡き者たちに回向するのだ
  そうすれば餓鬼たちは救われ お前の寿命も延びるであろう」
 とおっしゃいました
阿難はさっそく 米や水を用意し 餓鬼たちに施しました
そして 心をこめて仏の教えを語り その功徳をすべての亡き者へ回向しました
するとどうでしょう
闇の中から あの餓鬼たちが姿を現し さっきまでの恐ろしい顔が
まるで朝日のように やわらかく輝きはじめたのです
「阿難よ……ありがとう……」
餓鬼たちは涙を流しながら 苦しみの世界から解き放たれていきました
その瞬間 阿難の体がふっと軽くなり
胸の奥にあたたかい光が 灯ったように感じました
阿難は寿命を延ばし 餓鬼たちも救われたのです
それからというもの 人々は餓鬼たちに食べ物を施し
亡き者を供養する「施餓鬼(せがき)」を行うようになったという

コメント