むかしむかし ある町に小さなお寺がありました
そのお寺の近くには 一軒の飴屋(あめや)があり
毎日たくさんの子どもたちが飴を買いにやって来ました
ある日のこと 一人の若いお母さんが重い病にかかり
お腹に赤子を宿したまま この世を去ってしまいました
家族は深く悲しみ お寺で手厚くお葬式をしてお母さんをお墓に納めました
それからしばらくたった ある晩のことです
夜も更け 飴屋が店じまいをしようとすると
「トントン……」と
静かに戸をたたく音がしました
戸を開けると 白い着物を着た一人の女性が立っています
女性は何も言わず 一文銭を差し出して 飴を一つ買うと
静かに 暗い夜道へ消えていきました
次の晩も その次の晩も 同じ時刻になると女性は現れました
店主は
「毎晩来るとは不思議な人だ」 と思いましたが
お金はきちんと払うので 飴を渡していました
ところがある夜 ふしんに思い 店主は女性の後をそっとついて行くと
女性は町を抜け お寺の門をくぐり お墓の並ぶ墓地へ歩いて行きます
月明かりの中 女性は一つのお墓の前まで来ると
そのまますっと姿を 消してしまいました
店主は驚いて その場に立ち尽くしました
翌朝 店主は急いで住職に昨夜の出来事を話しました
住職は村の人たちと一緒に そのお墓を開けてみることにしました
すると そこには何と
生まれたばかりの赤子が 元気に泣いていたのです
赤子のそばには 飴の包み紙がいくつも落ちていました
亡くなったお母さんは 毎晩飴を買って 赤子の命を守っていたのでした
村の人たちは涙を流しました
「お母さんの子どもを思う心は 亡くなっても消えなかったのだ」
住職は赤子を寺へ迎え 大切に育てました
赤子は丈夫に育ち やがて立派なお坊さんとなって
多くの人々を助けるようになったと伝えられています
それ以来 お寺では毎年 お母さんの供養と子どもたちの
健やかな成長を願う法要が 行われるようになりました
そして村の人々は
「親の愛は 命を超えて 子どもを守る」
と各地に語り継がれています
子育て幽霊
幽霊


コメント