小坊主と 牛久沼の牛のしっぽ

教え

むかしむかし 牛久沼のほとりにある金龍寺というお寺に 一人の小坊主がおりました

その小坊主は とても食いしん坊でした
お膳にご飯が並ぶと 誰よりもたくさん食べ
お腹がいっぱいになると すぐにごろりと横になって
昼寝をしてしまいます
住職さまは その様子を見るたびに言いました
「小坊主よ 食べてすぐ寝てばかりいると 牛になってしまうぞ」
ところが小坊主は笑いながら
「牛になるはずがありません」
と言って 毎日同じことを繰り返していました

ある朝 小坊主が目を覚ますと 体が何だか重たく感じます
鏡をのぞくと 頭には角が生え 顔は牛の顔になっています
「これは大変だ!」
驚いて外へ飛び出すと 体はみるみる牛へと変わり
とうとう言葉まで 話せなくなってしまいました
住職さまは 悲しそうに言いました

「人は欲に負け 怠ける心を放っておくと
 心まで 牛のようになってしまうのだ」

小坊主は 自分のしてきたことを 深く恥じました
恥ずかしさと悲しさのあまり 牛となった小坊主は
牛久沼へ向かい そのまま沼へ入っていこうとしました
「待ちなさい!」
住職さまは必死に追いかけ 牛のしっぽをつかみました
けれども 牛の力はあまりにも強く しっぽだけがぷつりと切れ
牛は静かに沼の底へ 沈んでしまいました

住職さまは 切れたしっぽを抱きしめながら 長い間手を合わせました
そして そのしっぽを 仏さまの教えを説くときに使う
払子(ほっす)に作り替え 大切に お寺へ納めたのです
それからというもの 住職さまは法話のたびに 払子(ほっす)を手に取り
人々へこう語りました

「人は誰でも欲に負け 怠けてしまうことがあります
 しかし 自分の過ちに気づき 心を改めれば
 その失敗さえ 仏さまの教えとなるのです」

牛久沼のほとりを渡る風が吹くたびに 人々はこの話を思い出し
「食べ過ぎはいけない 怠け心はもっといけない」
 自分の心を見つめ直したそうです。
こうして金龍寺には 牛になった小坊主の 牛のしっぽの払子(ほっす)
人の心を正しい道へ導く教えとして 今も語り継がれているといわれています

(茨城県に伝わる 昔話)

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